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ID:@960ywkwx
30代女性。
海外で生まれ育ってずっと暮らしていたが仕事の関係で8年前に来日された。
言葉や文化の違い、社会のルールなど様々な場面で精神的なストレスを感じていた。そのうちに1年も経たないうちに様々な体調不良を感じるようになっていった。
1番ひどかったのは腰痛でほとんど一日中違和感や重だるい痛みを抱えていた。時には電車やバスに乗っているときに痛みのあまり立てなくなってしまうこともあり、とても不安になってしまった。
また頭痛も発症するようになってしまい、特に左の後頭部を中心に頭全体に痛みを感じていた。
痛みが1番辛いのは朝起きた時で起きた瞬間から頭痛があるということで精神的にもさらに苦しくなっていった。
頭痛に関してはMRI検査、脳波など何ヶ月も検査を行っていったが異常は見つからずとりあえず鎮痛剤で様子を見るしかなかった。
色々な病院や整骨院、整体へ行ったが改善の兆しが見えず、ずっとこのまま治らないんじゃないかと焦りや不安感が日に日に増して行った。
整体や病院、治療法などを調べているうちにカイロプラクティックというのもよく目にするようになっていった。
以前から気にはなっていたが本格的に調べたことはなかったのでネットなどで調べていくうちに当院のホームページを見て、脳と神経にアプローチしていくということで今までにない方法だったのでもしかしたら改善するかもしれないということで来院された。
01
背部の筋肉の過緊張
02
上部胸椎部に広く深いスポンジ状の浮腫感
03
仙骨中央から左仙腸関節を跨ぐように浮腫感
初診時には骨盤部の浮腫感、胸椎2番の浮腫が強く、後頭部のこわばりも強かった。
6週目(6回目のアジャストメント)には、骨盤部特に左の仙腸関節の浮腫感やFIX(仙腸関節の動きが悪くなっている状態)も徐々に取れてきた。
歩いている時の腰の違和感も無くなってきており、初診時の腰の痛みを10とすると4くらいまで落ち着いてきた。
11週目(10回目のアジャストメント)には、腰の痛みはほぼ0になったということだった。骨盤の浮腫や動きもだいぶ良くなってきた。気がつけば頭痛も気にならないレベルまでに落ち着いていたとの事だった。
後頭部のこわばりもかなり減少。
14週目(13回目のアジャストメント)には、睡眠の質も向上してきたようで、夜もよく眠れる。
腰の痛みや頭痛もほぼ気にならないになり大変喜ばれていた。
今回の症例では、腰椎のレントゲン画像で骨の変形、骨棘形成、椎間板の変性が確認されたが、これ自体が直接腰痛の原因であった可能性は低いのではないかと考えられる。
その理由として日本腰痛学会、日本整形外科学会の「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」
によると特異的腰痛は全体の約15%で、非特異的腰痛は全体の85%とされている。
つまり。原因がはっきりとしている腰痛のことを特異的腰痛というがそれは全体の15%に過ぎないということ。
また、特異的腰痛には腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊椎骨折、圧迫骨折、尿路結石、解離性大動脈瘤、消化器疾患、脊椎腫瘍や化膿性脊椎炎などの脊椎感染症などが挙げられるが、本症例ではそのような診断はなかった。
また、腰椎椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄症での症状は「痛み」のほかに「下肢の痺れや脱力感」を伴うことがあるが、本症例ではそういった所見は見られなかった。
そこで、ガンステッドシステムに基づいて検査を実施したところ、左仙腸関節にサブラクセーション(神経異常の根本原因)が見つかった。
左腸骨のASIN変位が起こっていた。
つまり、左の長骨が前方回旋し、さらに内方に変位していたということである。
左の下肢の方が長くなる、仙腸関節の下部に浮腫感が見られるといったASIN変位特有の兆候が見られたのである。
そこで左の腸骨に対して継続的にアジャストメントを行っていったところ浮腫の減少、下肢長差の減少、腰仙部多裂筋、起立筋の過緊張が正常のトーンに落ち着いていった。
その背景を考察するが、前提としてカイロプラクティックのアジャストメントは構造的な変化を目的として行うものではないし、構造的に変化が起こることはほぼありえない。
では何故、下肢長差が減少したのか?
ガンステッドシステムではAS腸骨、つまり腸骨の前方回旋変位は下肢を引き下げ、PI腸骨は下肢を引き上げという理論である。
しかしながらそれにはまだ議論の余地があると思う。
腸骨に変位があるということは、その場所で固まってしまって動きが無くなってしまっているということである。
本症例の場合、ASIN変位なので、腸骨の前方変位かつ内方変位が起こったままそこで関節の動きが無くなってしまっているということである。
仙腸関節は衝撃吸収材として機能する為
慢性的に関節の動きが無くなってしまい関節機能障害が継続されると関節内の受容器、本症例では仙腸関節の受容器に対するネガティブな刺激が加わり続けることとなる。
その結果、浮腫(関節内水腫)と仙骨全体の浮腫、腰仙部の過剰な筋緊張が出現していたと考えられる。
仙腸関節自体が痛みの主な原因である場合もあれば、周囲組織の機能障害が仙腸関節の荷重伝達機能に影響を与え、痛みの刺激を引き起こす場合もあるし、筋の過緊張による筋筋膜性疼痛であれ、疼痛による二次的な腰部周囲の筋緊張が過剰となることはしばしば散見される。
特に腰方形筋の緊張は腸骨を上方に引き上げる。
これまで散々関節の動きが無い側の疼痛について触れてきたがガンステッドシステムでは、逆側つまり左仙腸関節が動いていないと右の仙腸関節が代償として過可動になるという理論がある。
では、どちらを優先すべきかということについては議論の余地があると思うがガンステッドシステムに基づいて右仙腸関節の過可動が働いたと仮定し、過可動による腰方形筋を中心とする腰部の筋群が緊張が起こったとする。
腰方形筋は腸骨から起始しR12に停止する。
腰方形筋が緊張した結果、腸骨を引き上げ見かけ上の脚長差が発生する。
上記の機序により右の腸骨が引き上げられた結果、左の下肢の方が長くなるということが事実として起こっていると考えられる。
ではなぜ、浮腫の減少や腰方形筋をはじめとする腰部の筋群である多裂筋、起立筋群の緊張が緩んでいったのかというと、継続的なアジャストメントによる仙腸関節の可動性の向上と固有受容器を主とする神経系の正常化に伴う過緊張の低下と考えられる。
今回の症例に対する考察は関節機能を中心に視点を置いた。
カイロプラクティックというと脊柱に付随する神経系にフォーカスすることが多いが今回は仙腸関節を中心とした神経系の安定化によって患者の腰痛が改善したとも言える症例報告である。
参考文献
腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)
Newman DP, Soto AT. Sacroiliac Joint Dysfunction: Diagnosis and Treatment. Am Fam Physician. 2022 Mar 1;105(3):239-245. PMID: 35289578.
Neuman DP, Soto AT. Sacroiliac Joint Dysfunction: Diagnosis and Treatment. Am Fam Physician. 2022;105(3):239-245.Grob KR, Neuhuber WL, Kissling RO. Die Innervation des Sacroiliacalgelenkes beim Menschen [Innervation of the sacroiliac joint of the human]. Z Rheumatol. 1995 Mar-Apr;54(2):117-22. German. PMID: 7793158.
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執筆者
細井 康隆
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